闇の子供たち
プレイバックシアターのソーシャルチェンジのセッションに合わせて、『闇の子供たち』を読んだ
先にDVDを観ていたので、大体のあらすじはわかっていたのですが、本と映画はまったく別の物語ですね
映画は、幼児売買、幼児売買春、臓器売買という悪に対して
目の前の一人を救えなくて、何の意味があるのか というミクロの視点と
全体の構造を変えなければ、同じことが繰り返される というマクロの視点
を対立軸に構成されていた
本は、もっと大きな視点で描かれていた
既得権を持つ権力者と
力なき抑圧され搾取される者との
一度出来上がってしまうとなかなか変えられない関係についてだ
私には、日本の元気がない地方都市や儲からないと嘆く中小企業と同じ構造だと感じられた
私は、この関係に興味が関心がある
この関係は、タイという国固有の問題ではなく
形を変えて、日本にも、企業の中にも、家庭においても、そして、私たち一人ひとりの心の中にも存在していることなのだ
だから、私には、これは極めて自分的問題なのだと考えている
私が日々格闘している対象そのものなのだ
私は、タイの問題を扱うことは今のところはないのだけれど、私が、目の前にいる、創造的な組織をつくりたいと思っている人のサポートをすることが、まわり回ってこの問題を解決することにつながると信じているのだ
つまり、
結局、地方や開発途上の国の問題は「創る」という能力が育まれていないところにある
金をもらって、インフラをつくってそれで終わりになってしまう
グラミン銀行のスモールファイナンスのように、そのお金で付加価値を創り出し、資本金が回転する仕組みをつくることができないと貧困らの脱出はできない
足りないから、奪い合うことになる
また、都市においても、「創る」能力がなければ、自己を表現するという充実感が得られずに心の貧困に陥ってしまう
だから、「創る」ということができるようになる必要があると考えるのです
本を読んで私が印象に残った部分を抜き出しておきます
ラストの部分
映画でにはない、人が突き動かされるリアリティについての表現がいきいきとされています
不安なまなざしで寄り添い、音羽恵子の手をしっかり握りしめている子供たちの手から伝わってくるぬくもりに音羽恵子はいまはっきりと思うのだった。わたしを必要としている子供たちがいる限り、わたしはここにとどまろう、と。それが私自身なのだから。この現実から別の現実-日本に逃避しても、わたしはわたし自身から逃れることはできない。わたしは子供たちと一緒に私自身を生きるのだ 469p
この手前に、南部からのメッセージがあり、そのせいではっきりと自覚をする
この国の子供のことは、この国の人間が解決するしかない。君は所詮、この国では外国人だ。日本に帰ってやることはいくらでもある
日本にいる外国人は所詮、日本人とはちがうのだという排他的な感情に他ならなかった
この部分は、著者が在日として生きてきたという背景もあって、切実に訴えかけてくる。それは、どうやって私たちは遠い国の出来事を自分ごととしてとらえうるのかというヒントを与えてくれているように思う
これは一つの問題ではありません。世界が直面している戦争、難民、差別、虐殺、途方もない犯罪、その他、あらゆる問題が集約されています。欧米や日本では、いったいどこにそんな問題があるのかと思っているでしょうけど、それは見ようとしないからです。見ようとしない者には存在しないも同然なのです。だからこそ、事実と真実を暴露し、世界が陥っている巨大な矛盾は、やがて自分たちの生活をも脅かすことになりかねない 274p
これが、主人公がみている、全体像ですね
音羽さんも南部も見ている全体像は同じです
ただ、アプローチの方法が違う
目の前の一人ひとりを救うのか、
大きな悪に立ち向かうのか
自分はどちらの立場から世界を見ているのか問いかけてきます
この問題は、堕落と腐敗にまみれた政財官の体質を正さなければ前進しないと思う。そのためには労働組合の力を借りて歩調を合わせ、政府に抗議する必要があると思うわ。この問題はすぐれて政治の問題でもあるのよ 286p
単独で講義やデモをしても、あまり効果がないということです。それどころか奴らは弱いとみると潰しにかかります。私は労働運動を二十年やってきましたが、抗議運動を起こすときは連帯が必要です。連帯すれば奴らも、そう簡単には動けません。力には力で対抗するだけの動員をかけて、一歩も引き下がらない気構えを見せなければ駄目です 305p
力と力のぶつかり合いでは、現実を解決することはできないということを日本人は安保闘争から学んだ。社会主義革命も結局は、新たな支配と服従の関係をつくり出すに過ぎなかった。ナパボーンは代替案を発見することができず、結局、全国大行進に参加することにした。日本人は、代替案がないまま希望を失っていった。私たちはどのような代替案を見出しうるだろうか?
「ぶんあなたには手を出さないと思う。政府は日本から多額の援助を受けてるから、日本人に手を出すと外交問題になって、援助にも影響が出るおそれがあるし・・・」
音羽恵子は個人的な立場で、幼児売買春や幼児売買を阻止するために少しでも役に立ちたいと思ってNGO活動に参加したが、自分の背後には経済大国日本が存在していることに気付かされて沈うつな気分になった 262p
何事も咲き出すものは金である。とたんに鍋島公彦はしょぼくれた顔になった 341p
つまりは、金の問題かと思うとこういう気持になる。おそらく、著者にはそうではない別の道が見えていることを暗示してくれている
飢えほど恐ろしいものはない。飢えは暴力や死をも凌駕する絶望なのだ。そのことはチューンは体で知っていた。センラーを奴隷のようにあつかえる方法は飢えの恐ろしさをセンラーの体に刻むことであった 22p
売春を強要されている幼い子供たちは、暗い闇の底で飢えに苦しみ、暴力に怯え、身も心もばらばらにされているのです。昼も夜も、夢の中にも、逃げ場はないのです。絶望しかありません。人間にとって一番恐ろしいのは飢えでもなければ死でもないのです。一番恐ろしいのは絶望です。幼い子供たちに生き抜く力があるでしょうか。だからわたしは、どんな小さな希望でも、子供たちに与えたいのです。それがまた私たちの希望につながるのです 275p
子供たちを飢えと暴力で支配しようとするマフィアと
その子供たちを救い出そうとするNGOのメンバーの視点が交差するところです
日本の社会のゆきづまりも絶望です
どうやって希望を見出すのか
日本には、飢えも暴力もなくなり、死は日常から隠されている
それでも、希望ではなく、絶望を見出そうとする
社会にとって必要なのは、いったい何なのだろうか?
そんなところを対話を通じて、活路を見出してゆきたいものだ
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